坂本龍一さんは、音楽を聴いても、歌詞はほとんど自分の中に入ってこないと言います。単なる記号でしかないので、自分の音楽には、あまり意味をなさないそうです。
今年の四月の彼のコンサートに行った時、ほぼピアノののみで、繰り広げられる彼の音楽は、自然と私の心に入って行き、言い知れぬ感動に包まれた私の眼からは、いつしか涙が溢れていました。
世界を活動の場にしている彼にとって、歌詞は、ある意味制約であって、音楽の広がりを妨げるものなのかもしれません。でも、私たちにとって、歌詞は大切です。旋律やメロディーから受ける感動とともに、歌詞の内容、歌声、そして自ら歌うことで得る喜びは、何事にも代えがたいものがあります。
歌詞は、ある一定の枠の世界を築く反面、そこからの広がりを阻む側面も持っています。しかし私たちは、歌を聴き、歌うことで、その時代の想い出、自分の記憶を重ね合わせ、歌詞の世界以上のものを、展開しているのです。
なので、私は歌詞はあった方がいいなと思います。