アンカーだった私は、最後の中継地点で、第五走者のタスキを待ってました。ふと、目をやると、どう見ても小学生ぐらいの女の子が、緊張した面持ちでウォーミングアップをしています。
どうやら中学校の陸上部らしく、そこのチームは、一年生がアンカーをつとめるのが慣わしのようです。次々と、タスキ掛けをして行く他チーム。しかし、彼女のチームの第五走者は、なかなか現れません。
そうこうしているうちに、前の区間を走り終えたチームメイト達が応援に駆けつけます。「〇〇先輩まだなの?膝痛めてたからねぇ‥」と心配そうに話しているうちに、もう中継地点には、我々のようなおじさんか、年配のシルバーチームの方ばかりになってきました。
すると、膝にテーピングをした女性が歯を食いしばって、現れます。「がんばれー〇〇先輩!!」ようやくタスキを渡すと倒れこみ、目には涙が浮かんでいました。
彼女は三年生で、この駅伝を最後に引退が決まっていました。次のタスキを後輩に託し、彼女の夏は終わったのです。
たぶんいい記録はでなかったかもしれませんが、タスキを託した方も託された方も、心に残るレースになったことでしょう。