「裕次郎は、やっぱり歌が上手い」祖父がボソッと言ったことがありました。こどもだった僕は、そうかなあ?という感じで、あまりピンときませんでした。
あれから数十年、明後日二十三回忌を迎えるとあって、各局で特集番組が組まれ、何気なく見ていると、ブレスの位置、音程、リズム、ことばの伝え方、どこをとっても裕次郎さんの歌には非の打ちどころがないのです。
そして、あの包み込むような甘い歌声は、どうやっても真似できません。
楽曲の提供者の方のお話では、曲が出来上がると、楽譜にじっくり目を通し、ここが歌いずらいとか、ここを直してほしいとかいう注文は一切つけなかったそうです。それは曲に対しての敬意であり、言葉の一言一言をじっくり自分のものにしてから歌うので、聞き手に感動を与えるようです。
板前だった祖父は職人気質であまり喋らない人でしたが、本物を見極める眼力はあったんだなあと、今にして気がつきました。