二歳の時に、はしかによる高熱で、視力を失った女性が、60歳を過ぎてから、世の中に何かできないかと考え、紙芝居による慰問を始めました。
紙芝居の一枚一枚に、点字の番号を張り、話は何度も音読し、全部暗記しました。いまどき紙芝居とは、思いつつも、これが意外と好評でした。
目が見えない分、語り口が実に表現豊かなのです。抑揚の付け方、間の取り方、また観客の息づかいを察知しながら、展開していくので、目の見える人がやるよりも、何倍も物語に引き込む力を持っています。
最初は批判的だった、同じく全盲の旦那さんも、奥さんの熱意に触発され、ご自分も挑戦してみました。すると、奥さん以上にハマってしまい、ダイナミックな語り口は、男性ならではの魅力ある紙芝居です。ただ、どうしても栃木訛りがぬけず、その都度奥さんから駄目だしを受けてます。
奥さんの方は、今秋招かれたイベントで、原爆問題を描いた大作に挑みました。重いテーマでしたが、抑揚のついた語り口は、観客の感動を呼び、皆涙していました。
レパートリーは10個で、今後もっと増やしていきたいそうです。
目が見えない人の世界は、暗闇のように思いがちですが、実はとてもピュアで、光輝いているのかもしれません。